【無人航空機操縦士】教則の確認
ドローン無人航空機操縦士の技能証明を受けるものは、航空機を飛行させるのに必要な法的知識が必要です。
安全な飛行ができるよう「無人航空機の飛行の安全に関する教則」令和5年4月13日第3版を読んでみることにします。
第5回も「航空法全般」です。
3.1.2 航空法に関する各論
ここでは大変重要なキーワードが出てきます。
飛行に際しては常に頭に浮かぶようにしておきましょう。
(1) 無人航空機の登録
1) 無人航空機登録制度の背景・目的
無人航空機による不適切な飛行事案への対応の必要性や無人航空機の利活用の増加に伴い、無人航空機の登録制度が創設された。
その目的は、
①事故発生時などにおける所有者把握、
②事故の原因究明など安全確保上必要な措置の実施、
③安全上問題のある機体の登録を拒否し安全を確保することである。
2) 無人航空機登録制度の概要
全ての無人航空機(重量が100グラム未満の模型航空機は除く。)は、国の登録を受けたものでなければ、原則として航空の用に供することができない。
登録の有効期間は3年である。登録記号を表示し、一部の例外を除きリモートID機能を備えなければならない。
3) 登録を受けることができない無人航空機
① 製造者が機体の安全性に懸念があるとして回収(リコール)しているような機体や、事故が多発していることが明らかである機体など、あらかじめ国土交通大臣が登録できないものと指定したもの
② 表面に不要な突起物があるなど地上の人などに衝突した際に安全を著しく損なうおそれのある無人航空機
③ 遠隔操作又は自動操縦による飛行の制御が著しく困難である無人航空機
4) 登録の手続き及び登録記号の表示
無人航空機の登録の申請は、オンライン又は書類提出により行い、手数料の納付等全ての手続き完了後、登録記号が発行される。
登録記号は、無人航空機の容易に取り外しができない外部から確認しやすい箇所に耐久性のある方法で鮮明に表示しなければならない。登録記号の文字は機体の重量区分に応じて次の高さとし、表示する地色と鮮明に判別できる色で表示しなければならない。
・最大離陸重量25kg以上の機体は25mm以上
・最大離陸重量25kg未満の機体は3mm以上
所有者又は使用者の氏名や住所などに変更があった場合には、登録事項の変更の届出をしなければならない。
3年の有効期間毎に更新を受けなければ、登録の効力を失う。
5) リモートID機能の搭載の義務
機体への物理的な登録記号の表示に加え、識別情報を電波で遠隔発信するリモート ID 機能を機体に備えなければならない。ただし、次に掲げる場合にあっては、リモートID機能の搭載が免除される。
① 無人航空機の登録制度の施行前(2022年6月19日)までの事前登録期間中に登録手続きを行った無人航空機
② あらかじめ国に届け出た特定区域(リモートID特定区域)の上空で行う飛行であって、無人航空機の飛行を監視するための補助者の配置、区域の範囲の明示などの必要な措置を講じた上で行う飛行
③ 十分な強度を有する紐(ひも)など(長さが30m以内のもの)により係留して行う飛行
④ 警察庁、都道府県警察又は海上保安庁が警備その他の特に秘匿を必要とする業務のために行う飛行
6) リモートID機器の概要及び発信情報
リモート ID 機能は、識別情報を電波で遠隔発信するためのものであり(内蔵型と外付型がある)、当該機器は技術規格書に準拠して開発・製造される。
リモート ID 機能により発信される情報には、静的情報として無人航空機の製造番号及び登録記号、動的情報として位置、速度、高度、時刻などの情報が含まれており(所有者や使用者の情報は含まれない)、1秒に1回以上発信される。
(2) 規制対象となる飛行の空域及び方法(特定飛行)の補足事項等
1) 規制対象となる飛行の空域
a. 空港等の周辺の空域
航空法に基づき原則として無人航空機の飛行が禁止されている「空港等の周辺の空域」は、空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、(進入表面等がない)飛行場周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域である。
ただし、航空機の離着陸が頻繁に実施される新千歳空港・成田国際空港・東京国際空港・中部国際空港・関西国際空港・大阪国際空港・福岡空港・那覇空港では、進入表面等の上空の空域に加えて、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域についても飛行禁止空域となっている。
b. 緊急用務空域
国土交通省、防衛省、警察庁、都道府県警察又は地方公共団体の消防機関その他の関係機関の使用する航空機のうち捜索、救助その他の緊急用務を行う航空機の飛行の安全を確保するため、国土交通省が緊急用務を行う航空機が飛行する空域(緊急用務空域)を指定し、この空域では、原則、無人航空機の飛行が禁止される(重量100グラム未満の模型航空機も飛行禁止の対象となる)。
災害等の規模に応じ、緊急用務を行う航空機の飛行が想定される場合には、国土交通省がその都度「緊急用務空域」を指定し、国土交通省のホームページ・Twitterにて公示する。
無人航空機の操縦者は、飛行を開始する前に、当該空域が緊急用務空域に該当するか否かの別を確認することが義務付けられている。
空港等の周辺の空域、地表若しくは水面から150m以上の高さの空域又は人口集中地区の上空の飛行許可があっても、緊急用務空域を飛行させることはできない。
c. 高度150メートル以上の空域
「高度150メートル以上の飛行禁止空域」とは、海抜高度ではなく、無人航空機が飛行している直下の地表又は水面からの高度差が150メートル以上の空域を指す。このため、山岳部などの起伏の激しい地形の上空で無人航空機を飛行させる場合には、意図せず150メートル以上の高度差になるおそれがあるので注意が必要である。
d. 人口集中地区
「人口集中地区(DID:Densely Inhabited District)」は、5年毎に実施される国勢調査の結果から一定の基準により設定される地域であり、現在は令和2年の国勢調査の結果に基づく人口集中地区が適用されている。
2) 規制対象となる飛行の方法
a. 昼間(日中)における飛行
無人航空機の操縦者は、昼間(日中。日出から日没までの間)における飛行が原則とされ、それ以外の飛行の方法(夜間飛行)は、航空法に基づく規制の対象となる。
「昼間(日中)」とは、国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間を指す。
b. 目視による常時監視
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させることが原則とされ、それ以外の飛行の方法(目視外飛行)は、航空法に基づく規制の対象となる。
「目視により常時監視」とは、飛行させる者が自分の目で見ることを指し、双眼鏡やモニター(FPV(First Person View)を含む。)による監視や補助者による監視は含まない(眼鏡やコンタクトレンズの使用は「目視」に含まれる)。
c. 人又は物件との距離
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に30メートル以上の距離(無人航空機と人又は物件との間の直線距離)を保って飛行させることが原則とされ、それ以外の飛行の方法は、航空法に基づく規制の対象となる。
「人又は物件」とは、第三者又は第三者の物件を指し、無人航空機を飛行させる者及びその関係者並びにその物件は該当しない。
また、「物件」とは、(a)中に人が存在することが想定される機器、(b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物等を指す。具体的な「物件」の例は次のとおり。
車両等:自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等
工作物:ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等
なお、土地や自然物(樹木、雑草等)などは、「物件」に該当しない。
d. 催し場所上空
無人航空機の操縦者は、多数の者の集合する催しが行われている場所の上空における飛行が原則禁止されている。
「多数の者の集合する催し」とは、特定の場所や日時に開催される多数の者が集まるものを指す。
その該当の有無については、催し場所上空において無人航空機が落下することにより地上等の人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や規模だけでなく、特定の場所や日時に開催されるかどうかによって総合的に判断される。
具体的には、次のとおり。
・該当する例
祭礼、縁日、展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート、町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為) 等
・該当しない例
自然発生的なもの(信号待ちや混雑により生じる人混み 等)
また、多数の者の集合する催しが行われている場所の上空における飛行に際しては、風速 5m/s 以上の場合は飛行を中止することや、機体が第三者及び物件に接触した場合の危害を軽減する構造を用意していることが必要である。
e. 危険物の輸送
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機により危険物を輸送することが原則禁止されている。
「危険物」とは、火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質、酸化性物質類、毒物類、放射性物質、腐食性物質などが該当する。
無人航空機の飛行のため当該無人航空機で輸送する物件は、「危険物」の対象とならない。
例えば、無人航空機の飛行のために必要な燃料や電池、安全装置としてのパラシュートを開傘するために必要な火薬類や高圧ガス、業務用機器(カメラ等)に用いられる電池が該当する。
f. 物件の投下
無人航空機の操縦者は、当該無人航空機から物件を投下させることが原則禁止されている。
物件の投下には、水や農薬等の液体や霧状のものの散布も含まれる。無人航空機を使って物件を設置する(置く)行為は、物件の投下には含まれない。
3) 規制対象となる飛行の空域及び方法の例外
a. 捜索、救助等のための特例
国や地方公共団体又はこれらから依頼を受けた者が、事故、災害等に際し、捜索、救助等の緊急性のある目的のために無人航空機を飛行させる場合には、特例として飛行の空域及び方法の規制が適用されない。災害時の対応であっても、国や地方公共団体にかかわらない独自の活動にあっては、特例の対象とはならず、国の飛行の許可・承認などの手続き等が必要となる。
b. 高度150メートル以上の空域の例外
地表又は水面から150メートル以上の高さの空域に関しては、航空機の空域と分離する観点から原則として飛行が禁止されているが、煙突や鉄塔などの高層の構造物の周辺は、航空機の飛行が想定されないことから、高度150メートル以上の空域であっても、当該構造物から30メートル以内の空域については、無人航空機の飛行禁止空域から除外されている。ただし、当該構造物の関係者による飛行を除き、第三者又は第三者の物件から30メートル以内の飛行に該当することから、当該飛行の方法に関する手続き等は必要となる。
c. 十分な強度を有する紐等で係留した場合の例外
十分な強度を有する紐(ひも)等(30メートル以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を講じて無人航空機を飛行させる場合は、人口集中地区、夜間飛行、目視外飛行、第三者から30メートル以内の飛行及び物件投下に係る手続き等が不要である。
自動車、航空機等の移動する物件に紐等を固定して又は人が紐等を持って移動しながら無人航空機を飛行させる行為(えい航)は、係留には該当しない。
4) その他の補足事項等
a. 第三者の定義
「第三者」とは、無人航空機の飛行に直接又は間接的に関与していない者をいう。
次に掲げる者は無人航空機の飛行に直接又は間接的に関与しており、「第三者」には該当しない。
(a)無人航空機の飛行に直接関与している者
直接関与している者とは、操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員とする。
(b)無人航空機の飛行に間接的に関与している者
間接的に関与している者(以下「間接関与者」という。)とは、飛行目的について無人航空機を飛行させる者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者とする。
a. 無人航空機を飛行させる者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している。
b. 間接関与者が、無人航空機を飛行させる者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の注意に従うことが期待され、無人航空機を飛行させる者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。
c. 間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。
b. 立入管理措置
特定飛行に関しては、無人航空機の飛行経路下において第三者の立入りを管理する措置(立入管理措置)を講ずるか否かにより、カテゴリーⅡ飛行とカテゴリーⅢ飛行に区分され、必要となる手続き等が異なる。
立入管理措置の内容は、第三者の立入りを制限する区画(立入管理区画)を設定し、当該区画の範囲を明示するために必要な標識の設置等としており、例えば、関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等による表示、補助者による監視及び口頭警告などが該当する。
ここまで、「無人航空機の飛行の安全に関する教則(令和5年4月13日第3版)」の中から抜粋して確認してみました。
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